「泳ぐたびに肩が痛い…」その悩み、あなただけではありません
こんな症状、思い当たりませんか?
- クロールや背泳ぎで腕を回すと、肩の前側や上部に鋭い痛みが走る
- プルの動作で引っかかるような違和感があり、思い切り泳げない
- 練習後に肩がズーンと重だるく、夜になっても痛みが引かない
- ストローク数が増えるにつれて、どんどん肩の動きが悪くなる
- 肩を回すとゴリゴリと音が鳴り、可動域が狭くなった気がする
水泳は全身運動でありながら、肩関節に大きな負担がかかるスポーツです。特にクロールやバタフライでは、肩を大きく回旋させる動作を何百回、何千回と繰り返すため、肩周辺の組織に疲労が蓄積しやすい特徴があります。
多くの方が「水泳で肩が痛いのは仕方ない」「肩を使いすぎているから休めば治る」と考えがちですが、実はその痛み、単なる使いすぎが原因ではない可能性があります。
痛みが出ている肩関節そのものは「結果」であり、本当の原因は身体の別の場所にあることがほとんどです。肩甲骨の動きの悪さ、胸椎(背中の中央部分の背骨)の硬さ、そして体幹の不安定性――これらが複雑に絡み合い、肩への過剰な負担を生み出しているのです。

水泳で肩が痛む本当の原因|運動連鎖の視点から紐解く根本メカニズム
水泳における肩の痛みを正しく理解するためには、「運動連鎖(キネティックチェーン)」という概念が欠かせません。これは「身体のある部分の動きが、連鎖的に別の部分へ影響を与える」という考え方です。
痛む部位は結果、原因は身体の別の場所にある
水泳で肩が痛む場合、多くのケースで以下のような運動連鎖の破綻が起きています。
- 胸椎(背中の中央部分)の可動性が低下している
- 背中が丸まったまま固まり、肩甲骨が外側に開いて動きが制限される
- 肩甲骨の安定性・可動性が失われ、肩関節だけで腕を回そうとする
- 肩関節のインナーマッスル(回旋筋腱板)に過剰な負担が集中する
- 結果として、肩関節周囲に炎症や痛みが発生する
つまり、肩が痛いからといって肩だけを治療しても、根本原因である胸椎や肩甲骨の問題を放置したままでは、また同じ痛みが繰り返されるのです。

水泳特有の「肩甲骨の機能不全」が痛みを生む
水泳のストローク動作では、肩甲骨が胸郭(肋骨のカゴ)の上をスムーズに滑走する動きが不可欠です。この動きを専門的には「肩甲上腕リズム」と呼びます。
理想的な動きでは、腕を上げる際に肩関節と肩甲骨が2:1の比率で連動します。つまり、腕を60度上げる場合、肩関節が40度、肩甲骨が20度動くのが正常な状態です。
【豆知識】肩甲上腕リズムとは?
腕を上げる動作では、肩関節だけでなく肩甲骨も連動して動きます。この2つの関節の協調的な動きを「肩甲上腕リズム」と呼び、この比率が崩れると肩関節に過剰なストレスがかかります。水泳では特に、この協調性が重要です。
ところが、デスクワークや日常の不良姿勢(猫背・巻き肩)によって胸椎が硬くなり、肩甲骨が外側に開いて固まった状態になっている方が非常に多いのです。
この状態で水泳のストローク動作を繰り返すと、肩甲骨がうまく動かないため、肩関節だけで腕を無理に回そうとしてしまい、回旋筋腱板(ローテーターカフ)と呼ばれる肩のインナーマッスルに過度な負担がかかります。
回旋筋腱板は肩甲下筋・棘上筋・棘下筋・小円筋という4つの小さな筋肉から構成されており、肩関節を安定させながら微細な動きをコントロールする役割を担っています。しかし、これらの筋肉は非常に繊細で、過負荷に弱いという特徴があります。

胸椎の硬さが引き起こす「代償動作」の連鎖
もう一つの大きな原因が、胸椎(胸部の背骨)の可動性低下です。
本来、ストローク動作では胸椎がしなやかに回旋(捻じれ)することで、肩への負担を分散します。ところが、長時間のデスクワークやスマホ使用で背中が丸まり、胸椎が硬くなってしまうと、胸椎が本来担うべき「捻じれる動き」を、肩関節が代わりに過剰に行おうとする代償動作が起こります。
これが水泳における典型的な運動連鎖の破綻パターンです。
【運動連鎖の破綻パターン】
- 胸椎の伸展・回旋可動性が低下(猫背で固まる)
- 肩甲骨が外側に開いたまま固定され、胸郭上の滑走性が失われる
- ストローク時に肩甲骨が十分に動かず、肩関節だけで代償する
- 肩関節のインナーマッスル(回旋筋腱板)に過負荷がかかる
- 炎症・痛み・インピンジメント(挟み込み)症状が発生
つまり、水泳で肩が痛む本当の原因は「肩そのもの」ではなく、胸椎と肩甲骨の機能不全にあると言えます。

自宅でできる!水泳肩の痛みを改善するセルフケアとエクササイズ
ここからは、運動連鎖の視点に基づいた具体的なセルフケアをご紹介します。重要なのは、痛みが出ている肩だけをケアするのではなく、原因部位である胸椎と肩甲骨へ適切にアプローチすることです。
以下では、【基礎】【中級】【応用】の3段階に分けて、誰でも自宅で実践できるエクササイズを詳しく解説します。画像がなくても正確に再現できるよう、動作の手順・呼吸・秒数・注意点まで丁寧に言語化していますので、ぜひ順を追って取り組んでみてください。
【基礎レベル】胸椎伸展ストレッチ(フォームローラー使用)
目的:猫背で硬くなった胸椎(背中の中央部分)の伸展可動性を取り戻し、肩甲骨が動きやすい土台を作る
【開始姿勢】
- フォームローラー(または丸めたバスタオル)を床に横向きに置く
- 仰向けになり、肩甲骨の下縁(背中の中央やや下)にローラーが当たるよう位置を調整する
- 両足は腰幅に開き、膝を90度に曲げて床にしっかりと足裏を付ける
- 両手を後頭部で組む、または胸の前で腕を組む
【動作手順】
- 鼻からゆっくりと息を吸いながら、背中をローラーに沈めるようにして胸を天井方向へ開いていく
- 背骨がローラーの上でしなやかに反るイメージで、肩甲骨の間を広げる意識を持つ
- 口からゆっくりと息を吐きながら、元の姿勢に戻る(背中をフラットに戻す)
- この動きを8〜10回繰り返す
- ローラーの位置を少し上下にずらし、背中全体(胸椎全域)をまんべんなく伸ばす
【呼吸のタイミング】
- 吸う:背中を反らせるとき
- 吐く:元の姿勢に戻るとき
【秒数・回数・セット数】
- 1回の動作:3〜5秒かけてゆっくりと
- 回数:8〜10回
- セット数:1〜2セット
- 頻度:毎日、特に練習前後に実施
【注意点・やってはいけないこと】
- 腰を反らせすぎないこと(腰痛の原因になります)
- 首に力を入れず、後頭部は軽く手で支える程度にする
- 呼吸を止めないこと(息を吐きながら筋肉を緩める意識)
- 痛みが出る場合は、ローラーの位置や圧の強さを調整する

【中級レベル】肩甲骨ウォールスライド(壁を使った肩甲骨可動域改善)
目的:肩甲骨を正しい軌道で動かす練習をし、肩関節との協調性(肩甲上腕リズム)を取り戻す
【開始姿勢】
- 壁に背中をぴったりと付けて立つ
- 足は壁から30cm程度離し、膝を軽く曲げる(骨盤を壁に付けやすくするため)
- 後頭部・肩甲骨・お尻・かかとを壁に付け、腰と壁の間には手のひら1枚分の隙間を保つ
- 両腕を「W」の字になるように曲げ、肘と手の甲を壁に付ける(肘は90度に曲げる)
【動作手順】
- 鼻から息を吸いながら準備する
- 口から息を吐きながら、肘と手の甲を壁から離さないように意識し、両腕をゆっくりと頭上へスライドさせる(「Y」の字へ)
- このとき、肩甲骨が背骨に寄りながら上方へ回旋していく感覚を意識する
- 腕が伸びきる手前で止め、再び息を吸いながら「W」の字へ戻る
- 戻る際は、肩甲骨を下方へ引き下げる意識を持つ
- この動作を10〜12回繰り返す
【呼吸のタイミング】
- 吸う:準備姿勢(W字)のとき
- 吐く:腕を上げるとき(Y字へ)
- 吸う:腕を下ろすとき(W字へ戻る)
【秒数・回数・セット数】
- 1回の動作:4〜6秒かけてゆっくりと
- 回数:10〜12回
- セット数:2〜3セット
- 頻度:週3〜5回、練習前のウォームアップとして最適
【注意点・やってはいけないこと】
- 肘や手の甲が壁から離れないように注意(離れると肩甲骨の動きが不十分になる)
- 腰が反りすぎないこと(腹筋に軽く力を入れて体幹を安定させる)
- 肩がすくまないように、首をリラックスさせる
- 痛みが出る場合は、腕を上げる高さを調整する(無理に最後まで上げなくてOK)
このエクササイズは、水泳で必要な「肩甲骨の上方回旋」の動きを正しく再学習するために非常に効果的です。壁という抵抗があることで、肩甲骨周りの筋肉(僧帽筋下部・前鋸筋)が正しく働くようになります。
【応用レベル】プランク・ショルダータップ(体幹安定性+肩甲骨コントロール)
目的:体幹を安定させた状態で肩甲骨と肩関節を連動させ、水泳のストローク動作に必要な動的安定性を養う
【開始姿勢】
- 四つ這いの姿勢から、両手を肩幅に開いて床につく
- 両足を後ろへ伸ばし、つま先で体を支える(プランクポジション)
- 頭からかかとまで一直線になるように体幹を安定させる
- 目線は斜め前方、首はニュートラルな位置に保つ
【動作手順】
- 鼻から息を吸いながら体幹に力を入れ、骨盤が左右に傾かないよう安定させる
- 口から息を吐きながら、右手をゆっくりと床から離し、左肩にタッチする
- このとき、体が捻じれたり、お尻が左右に振れたりしないよう、体幹でしっかりと支える
- 右手を元の位置に戻し、次に左手で右肩をタッチする
- 左右交互に10〜16回(片側5〜8回ずつ)繰り返す
【呼吸のタイミング】
- 吸う:プランク姿勢を保持しているとき
- 吐く:手を肩にタッチするとき
【秒数・回数・セット数】
- 1回の動作:2〜3秒かけてコントロール
- 回数:左右交互に10〜16回
- セット数:2〜3セット
- セット間の休憩:30〜60秒
- 頻度:週3〜4回、体幹トレーニングの一環として
【注意点・やってはいけないこと】
- お尻が上下に動いたり、左右に振れたりしないように体幹で固定する
- 肩甲骨が外側に開きすぎないよう、背中の筋肉(前鋸筋)でしっかり支える
- 首がすくまないように、肩と耳の距離を保つ
- 腰が反らないよう、下腹部に軽く力を入れる
- 難易度が高い場合は、膝をついた状態で行ってもOK
このエクササイズは、体幹の安定性を保ちながら肩甲骨をコントロールする能力を高めます。水泳では、体幹が安定していないと効率的なストローク動作ができず、肩へ無駄な負担がかかります。このトレーニングで動的安定性を養うことで、泳ぎのパフォーマンスも向上します。

【仕上げ】肩関節周辺のセルフリリース(痛みの軽減)
ここまでのエクササイズで胸椎・肩甲骨の動きを改善したら、最後に痛みが出ている肩関節周辺の筋肉を優しくリリースして血流を促しましょう。
【テニスボールを使った三角筋・棘下筋リリース】
- 壁とテニスボール(または筋膜ボール)を用意する
- 肩の後ろ側(三角筋後部〜棘下筋)にボールを当て、体重をかける
- 圧がかかったまま、腕を小さく前後に動かして筋肉をほぐす
- 痛気持ちいい強さで30〜60秒キープ
- 左右それぞれ実施する
【注意点】
- 骨や神経を直接圧迫しないよう、筋肉の部分にボールを当てる
- 痛みが強すぎる場合は圧を弱める、または中止する
これらのセルフケアを継続することで、運動連鎖の破綻を修正し、水泳時の肩への負担を根本的に軽減することができます。
より詳しいランナー膝の痛みの原因と改善法については、ランナー膝の痛みの原因は「膝」じゃない!運動連鎖から見た根本改善法の記事もあわせてご覧ください。
当院の徒手療法×マシンピラティスで実現する水泳肩の根本改善
ここまで、ご自宅でできるセルフケアをご紹介してきましたが、痛みが慢性化している場合や、どうしても改善しない場合は、専門家による適切な介入が必要です。
高崎スポーツ整骨院 rapportment(ラポートメント)では、整形外科での長年の臨床経験に基づき、運動連鎖の視点から根本原因を特定し、2段階のアプローチで水泳肩を改善していきます。

Stage 1:徒手療法で「動けない原因」を取り除く
まず最初に行うのが、筋膜リリース・関節モビリゼーションといった徒手療法です。
水泳肩の場合、多くのケースで以下の組織の正常な機能が損なわれています。
- 胸椎の伸展・回旋可動性の制限
- 肩甲骨周辺の筋膜(僧帽筋・前鋸筋・菱形筋)の高密度化
- 大胸筋・小胸筋の過緊張による巻き肩
- 肩関節後方の関節包(かんせつほう)の硬さ
これらの問題に対し、手技による精密なアプローチで組織の滑走性を回復させます。特に重要なのが、コラーゲン線維が過剰に増殖して動きが悪くなった筋膜に対し、適切な圧と方向で刺激を加えることです。
この段階で、硬くなっていた胸椎が動き始め、肩甲骨の滑走性が改善します。すると、肩関節への過剰な負担が自然と軽減されるのです。

Stage 2:マシンピラティス・ファンクショナルトレーニングで「正しい動きを記憶させる」
徒手療法で可動性を取り戻しただけでは不十分です。なぜなら、長年の誤った動作パターンが脳に記憶されているため、すぐに元の悪い動きに戻ってしまうからです。
ここで重要になるのが、マシンピラティスとファンクショナルトレーニングによる運動療法です。
マシンピラティスのリフォーマーという専門マシンを使うことで、以下のような効果が得られます。
- 不安定な環境下で体幹を安定させながら、肩甲骨を正しい軌道で動かす練習ができる
- 適切な負荷をかけながら、肩関節のインナーマッスル(回旋筋腱板)を強化できる
- 水泳の動作パターンに近い動きを、痛みのない範囲で繰り返し練習できる
特に当院では、水泳特有の「肩甲上腕リズム」を正しく再学習させるプログラムを組んでいます。これにより、痛みのない効率的なストローク動作が身につき、再発予防にも繋がります。

自己流ケアとの決定的な違い
ご自宅でのセルフケアももちろん重要ですが、専門家による評価と介入には、以下のような明確な違いがあります。
- 正確な原因の特定:肩甲骨・胸椎・体幹のどこに問題があるのかを、解剖学的な評価と動作分析で正確に特定できる
- 適切な負荷設定:筋力強化においても、弱すぎず強すぎない最適な負荷で、安全かつ効率的にトレーニングできる
- 動作パターンの修正:誤った動作パターンを客観的にチェックし、正しい体の使い方を脳と身体に記憶させることができる
- 再発予防の徹底:痛みが取れた後も、競技復帰後の動作を想定したトレーニングで再発を防ぐ
特に慢性化した痛みや、大事な大会前に確実に治したい場合は、専門的なアプローチが不可欠です。
テニス肘やゴルフ肘など、他の腕の痛みについても運動連鎖の視点で解説していますので、テニス肘の痛みの場所はどこ?外側・内側の違いと運動連鎖で見る根本原因も参考にしてみてください。
まとめ|水泳で肩が痛むなら、肩甲骨と胸椎から改善を
水泳で肩が痛む本当の原因は、肩関節そのものではなく、胸椎の硬さと肩甲骨の機能不全にあります。
【この記事の要点】
- 痛む部位(肩関節)は結果であり、本当の原因は胸椎・肩甲骨の運動連鎖の破綻
- セルフケアでは、胸椎の伸展可動性改善→肩甲骨の正しい動き再学習→局部リリースの順で行う
- 慢性化した痛みには、徒手療法×マシンピラティスによる専門的アプローチが効果的
- 再発予防のためには、正しい動作パターンを脳と身体に記憶させることが重要
痛みを我慢して泳ぎ続けると、肩関節の損傷が進行し、最悪の場合は手術が必要になることもあります。早めに適切なケアを始めることが、競技寿命を延ばす鍵です。
高崎スポーツ整骨院 rapportment(ラポートメント)では、スポーツ障害はもちろん、慢性的な肩こりや腰痛、交通事故後の治療にも対応しています。群馬県高崎市の矢中・倉賀野エリアで、根本から身体を改善したい方は、ぜひ一度ご相談ください。
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